不動産売却の減価償却と取得費の計算

2026年10月02日

不動産売却の減価償却と取得費の計算

不動産を売却すると、譲渡所得に対して所得税・住民税が課されます。この譲渡所得を正しく計算するために欠かせないのが、減価償却費と取得費の算出です。

 

 

しかし「構造によって耐用年数が違う」「取得費に何を含めてよいか分からない」といった疑問を抱える方は少なくありません。

 

 

この記事では、木造・鉄骨・RC造の構造別に具体的な数値を挙げながら、札幌の不動産事情に即した減価償却と取得費の計算方法を詳しく解説します。

 

 

 

減価償却費の基本と譲渡所得における役割

 

まずは不動産売却における減価償却の全体像を押さえましょう。なぜ減価償却が必要なのかを理解することで、計算の意味が明確になります。

 

 

 

譲渡所得の計算式と減価償却の位置づけ

 

不動産売却で得た利益(譲渡所得)は、以下の計算式で求めます。

 

 

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

 

 

ここでいう取得費とは、購入代金から建物の減価償却費を差し引いた金額です。土地は経年で価値が減らないため減価償却の対象外ですが、建物は年数の経過により価値が下がるとみなされます。

 

 

つまり、減価償却費の金額が大きいほど取得費は小さくなり、結果として譲渡所得が増えて税負担も重くなります。正確な計算が節税の第一歩といえるでしょう。

 

 

 

事業用と非事業用(マイホーム)の違い

 

減価償却の計算方法は、その不動産が事業用か非事業用(マイホーム)かで異なります。

事業用(賃貸物件など):法定耐用年数をそのまま使い、毎年の確定申告で減価償却費を経費計上

非事業用(マイホーム):法定耐用年数の1.5倍の年数を使い、売却時にまとめて減価償却費を計算

償却率:非事業用は耐用年数が長くなる分、1年あたりの償却率が低くなる

マイホームの売却では、毎年の減価償却を意識する機会がないため、売却時に初めて計算に戸惑う方が多くいらっしゃいます。

 

 

 

構造別・築年数別の減価償却費の計算方法

 

不動産売却時の減価償却費は、建物の構造と築年数によって大きく異なります。ここでは構造別の早見表と、具体的な計算例をご紹介します。

 

 

 

木造・鉄骨・RC造の耐用年数と償却率早見表

 

非事業用(マイホーム)の場合の耐用年数と償却率は以下のとおりです。

木造:法定耐用年数22年 → 非事業用33年(償却率0.031)

軽量鉄骨造(骨格材3mm超4mm以下):法定耐用年数27年 → 非事業用40年(償却率0.025)

重量鉄骨造:法定耐用年数34年 → 非事業用51年(償却率0.020)

RC造(鉄筋コンクリート):法定耐用年数47年 → 非事業用70年(償却率0.015)

事業用の場合は、法定耐用年数をそのまま使います。木造なら22年(償却率0.046)、RC造なら47年(償却率0.022)です。

 

 

 

築30年木造と築25年RC造の具体的な計算例

 

それぞれの構造で、非事業用(マイホーム)の場合の計算例を見てみましょう。

 

 

【例1】木造戸建て・建物取得費1,500万円・築30年の場合

 

 

減価償却費 = 1,500万円 × 0.9 × 0.031 × 30年 = 約1,255万円

 

 

建物の取得費は 1,500万円 − 1,255万円 = 約245万円となります。築30年の木造は減価償却費が大きく、取得費がかなり圧縮される点に注意が必要です。

 

 

【例2】RC造マンション・建物取得費2,500万円・築25年の場合

 

 

減価償却費 = 2,500万円 × 0.9 × 0.015 × 25年 = 約843万円

 

 

建物の取得費は 2,500万円 − 843万円 = 約1,657万円です。RC造は耐用年数が長いため、同じ築年数でも木造より取得費が多く残ります。

 

 

このように構造の違いによって減価償却費に大きな差が出るため、ご自身の建物構造を正確に確認することが重要です。

 

 

 

取得費に含められる費用と含められない費用

 

不動産売却の減価償却と取得費の計算では、何を取得費に含めてよいかの判断も大切です。含められる費用を見落とすと、譲渡所得が過大になり税負担が増えてしまいます。

 

 

 

取得費に算入できる費用の○×一覧表

 

一般的に取得費に含められるものと含められないものを整理しました。

 

 

【○ 取得費に含められる費用】

建物・土地の購入代金

購入時の仲介手数料

登録免許税・不動産取得税・印紙税

司法書士への登記費用

購入時の測量費・整地費用

資本的支出に該当するリフォーム費用

建物の解体費用(取得目的の場合)

住宅ローンの事務手数料・保証料

【× 取得費に含められない費用】

住宅ローンの利息(入居後のもの)

火災保険料・地震保険料

引越し費用・家具購入費

固定資産税・都市計画税(毎年の支払い分)

修繕費に該当する小規模な修理費用

購入時の領収書や契約書を保管しておくと、取得費を漏れなく計上でき、結果的に税負担の軽減につながります。

 

 

 

土地と建物が一括価格の場合の按分方法

 

中古物件の売買契約書では、土地と建物の価格が分かれていないケースが多く見られます。この場合、建物分の取得費を算出するために按分計算が必要です。

 

 

一般的に用いられるのは、固定資産税評価額の比率で按分する方法です。

 

 

【計算例】購入総額3,000万円、固定資産税評価額が土地1,200万円・建物800万円の場合

 

 

建物の割合 = 800万円 ÷(1,200万円 + 800万円)= 40%

 

 

建物の取得費 = 3,000万円 × 40% = 1,200万円

 

 

この方法のほか、国税庁が公表する建物の標準的な建築価額表を使って推計する方法もあります。按分方法によって減価償却費や譲渡所得が変わるため、税理士に相談されることをおすすめします。

 

 

 

取得費が不明な場合の対処法と概算取得費5%ルール

 

相続や古い物件の売却では、購入時の契約書が残っておらず取得費が分からないケースも珍しくありません。そのような場合の計算方法を解説します。

 

 

 

概算取得費の計算と注意点

 

取得費が不明な場合、売却価格の5%を概算取得費として計算に使うことが認められています。

 

 

【計算例】売却価格2,000万円で取得費不明の場合

 

 

概算取得費 = 2,000万円 × 5% = 100万円

 

 

この場合、譲渡所得は売却価格のほぼ全額に近くなるため、税負担が非常に大きくなります。実際の購入価格が概算取得費を上回るなら、契約書の再取得や金融機関の融資記録で取得費を証明するほうが有利です。

 

 

なお、実際の取得費と概算取得費のどちらか有利な方を選択できるため、まずは購入当時の資料を探すことが大切です。

 

 

 

相続・贈与で取得した不動産の取得費引き継ぎルール

 

相続や贈与で取得した不動産を売却する場合、取得費の取り扱いには特有のルールがあります。

相続の場合:被相続人(亡くなった方)の取得費をそのまま引き継ぐ

贈与の場合:贈与者の取得費をそのまま引き継ぐ

減価償却の計算期間:被相続人・贈与者が取得した時点から売却時までの全期間を通算する

相続税の取得費加算:相続税の申告期限から3年以内の売却なら、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例あり

相続で引き継いだ古い物件は、取得当時の契約書が見つからないことも多いため、被相続人の書類を早めに確認しておくことをおすすめします。

 

 

当社では、相続物件や築古物件の買取実績が豊富にございます。物件種別ごとの買取についてはこちらをご覧ください。

 

 

 

札幌の不動産で気をつけたい減価償却と取得費の計算

 

札幌ならではの不動産事情が、減価償却や取得費の計算に影響を与えるケースがあります。道内の物件を売却する際に知っておきたいポイントをまとめました。

 

 

 

寒冷地仕様の建築費単価が計算に与える影響

 

北海道の建物は、断熱材の厚みや二重窓、融雪設備など寒冷地仕様の設計が施されており、本州に比べて建築費単価が10〜15%ほど高い傾向にあります。

 

 

2026年現在、札幌市内の木造戸建ての建築費単価は坪あたり約70〜85万円、RC造マンションでは坪あたり約100〜130万円が目安です。本州の平均より高い建築コストは、取得費が不明な場合に建築価額表で推計する際にも影響を及ぼします。

 

 

実際の建築費が標準的な建築価額表の数値を上回る場合は、寒冷地仕様の見積書や工事契約書が取得費の証明に役立つことがあります。

 

 

 

札幌に多い築古木造・RC造マンションの計算例

 

札幌の市街地エリアや地下鉄沿線には、築30年超の木造戸建てや築25〜35年のRC造マンションが多く存在します。2026年の札幌の不動産市場では、こうした築古物件の売却相談が増加傾向にあります。

 

 

【札幌の計算例】築35年・木造戸建て・建物取得費1,800万円(寒冷地仕様)の場合

 

 

非事業用の耐用年数33年をすでに超えているため、耐用年数を超過した物件の簡便法で計算します。

 

 

減価償却費 = 1,800万円 × 0.9 × 0.031 × 33年 = 約1,657万円

 

 

建物の取得費は 1,800万円 − 1,657万円 = 約143万円まで圧縮されます。JR沿線エリアの築古戸建てなどは、このように取得費がわずかになるケースが少なくありません。

 

 

こうした築古物件は仲介での売却に時間がかかることも多く、買取であれば最短翌日の現金化が可能です。札幌の不動産の無料査定はこちらからお気軽にご相談ください。

 

 

 

確定申告の記入手順と必要書類チェックリスト

 

不動産売却後の確定申告では、計算した減価償却費や取得費を「譲渡所得の内訳書」に正確に記入する必要があります。ここでは申告の流れと必要書類を整理します。

 

 

 

譲渡所得の内訳書の記入ポイント

 

不動産売却の確定申告では、確定申告書Bに加えて「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」の提出が求められます。

 

 

記入の流れは以下のとおりです。

1面:売却した不動産の所在地・面積・売却価格を記入

2面:取得費(購入代金・付随費用)と減価償却費の計算を記入

3面:譲渡費用(仲介手数料・測量費等)を記入

4面:特別控除の適用がある場合はその内容を記入

2面の減価償却費の欄には、建物の構造・耐用年数・償却率・経過年数を記載し、先述の計算式で算出した金額を転記します。

 

 

マイホームの売却では3,000万円の特別控除が適用できる場合があり、多くの方は税額がゼロになることもありますが、特別控除を受けるためにも確定申告は欠かせません。

 

 

 

申告時に必要な書類一覧

 

確定申告に向けて準備しておきたい書類を一覧にまとめました。

売買契約書(売却時のもの)

売買契約書(購入時のもの)・領収書

登記事項証明書(登記簿謄本)

仲介手数料の領収書

固定資産税評価証明書または納税通知書

リフォーム工事の契約書・領収書(ある場合)

譲渡所得の内訳書(税務署またはe-Taxで入手)

本人確認書類・マイナンバー

特に購入時の契約書は取得費の証明に不可欠です。見つからない場合は、不動産会社や金融機関に写しが残っていないか確認してみましょう。

 

 

当社では売却後の確定申告に必要な資料のお渡しも迅速に対応しております。当社の会社概要・実績はこちらをご確認ください。

 

 

 

よくある質問

 

 

 

Q: 建物の取得費が分からない場合、減価償却費はどう計算すればよいですか?

 

A: 取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として使う方法が一般的です。ただし概算取得費は金額が小さくなるため、税負担が大きくなる傾向があります。

 

 

より有利に計算するには、国税庁の建築価額表を使い、建築年と構造から当時の建築費を推計する方法も認められています。購入時の融資記録や不動産会社への問い合わせで契約書を再取得できる場合もあるため、まずは資料を探すことをおすすめします。

 

 

 

Q: 土地と建物の購入価格が一括表示の場合、建物分の取得費はどう按分しますか?

 

A: 多くの場合、購入時点の固定資産税評価額の比率を用いて按分します。たとえば土地の評価額が1,000万円、建物の評価額が500万円であれば、建物の割合は約33%です。

 

 

そのほか、消費税額から建物価格を逆算する方法や、不動産鑑定士の評価を利用する方法もあります。按分方法によって減価償却費が変わるため、複数の方法を比較して有利なものを選ぶとよいでしょう。

 

 

 

Q: マンションの減価償却で使う耐用年数は何年ですか?

 

A: RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションは法定耐用年数が47年です。マイホーム(非事業用)の場合はその1.5倍の70年を耐用年数として使い、償却率は0.015となります。

 

 

鉄骨造のマンションの場合は法定耐用年数が34年で、非事業用は51年(償却率0.020)です。構造は登記簿の「構造」欄で確認できますので、売却前にご確認ください。

 

 

 

Q: リフォーム費用は取得費に含めて減価償却の計算に使えますか?

 

A: 資本的支出に該当するリフォームであれば、取得費に加算して減価償却の計算に使うことが一般的に認められています。資本的支出とは、建物の価値を高めたり耐久性を向上させたりする工事のことです。

 

 

具体的には、間取り変更・外壁の全面張り替え・耐震補強工事などが該当します。一方、壁紙の張り替えや水栓の交換など、原状回復を目的とした修繕費は取得費に含められませんのでご注意ください。

 

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